2018年4月27日金曜日

皮膚疾患マメ講座 第18回 プロトピック®軟膏


このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。


 プロトピック®軟膏はアトピー性皮膚炎の治療薬の一つです。ステロイド外用剤ではなく免疫抑制外用剤です。治療だけでなく予防も兼ね備えて使えるので,「ステロイド外用剤だと治るけれど,保湿剤だけでは予防できないから困る。」という人におすすめです。

 基本は顔面につける薬ですが,効果の高い人には体に使用することも可能です。


長所:①ステロイド外用剤と異なり長期使用しても皮膚は薄くならない。

②病変部の皮膚には入り込むが,正常部の皮膚には入り込まないので治療だけでなく予防にも使える。

 こう書くと非常にいい薬に思えますが,刺激を感じやすいという弱点もあります。

短所:①使い初めに使用部がほてったり,ピリピリ感など刺激症状がある。

②ヘルペスやニキビなど皮膚感染症をおこすことがある。

説明書によるとプロトピック®軟膏を1週間塗り続けていると刺激感は感じられなくなる,となっています。それでも刺激感が強くてプロトピック®軟膏は使えないという方が大勢いらっしゃいます。


 そこでできるだけピリピリ感など刺激を感じないよう以下の方法を提案します。

方法:①風呂上り直後は体がほてった状態なので,しばらく時間をおいてこのほてりがとれてから塗る。

②いきなり広範囲に塗ると刺激を感じやすいので,最初は狭い範囲にチョンチョンとつけるだけにする。決して薬を伸ばさない。刺激に慣れたら徐々に塗る範囲を拡げる。

③保湿剤を先に塗ったり,混ぜたりすると刺激を感じにくくなる。当院では保湿剤と1:1,あるいは1:2でうすめて開始しています。

④塗ったところ,特にすこし刺激がある時に保冷剤などで冷やす。

⑤塗った直後は日光を避ける。

 理屈では非常に良い薬なのですが,ピリピリほてる刺激感のため使えない方が結構いらっしゃるのが現実です。この薬をなんとか使いこなせないかと日々考えているところです。

コーヒーブレイク 第18回 星野仙一氏との思い出


このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。
今年201814日星野仙一氏が死去されました。選手時代は闘争心あふれるプレイスタイルで活躍し,阪神の監督に就任されてからは厳しさの中にも愛情あふれる姿が印象的で,引退されてからも隠そうとしても隠し切れない野球に対する熱い情熱を感じさせる素晴らしい野球人でした。数多くの人がそんな星野氏に魅せられていました。

かくいう私もその一人で,2003年の阪神優勝のパレード時は星野氏を一目見ようと当時住んでいた島根県から駆けつけたくらいです。最近も東京と大阪で2度のお別れの会が開かれ多数の方々が献花に訪れたことをニュースで聞いた人もいると思います。

実は赤木には星野仙一氏と個人的なエピソードがあります。2年前の皮膚科学会に特別講演の講師として星野仙一氏が招かれ,学会後のパーティにも参加され乾杯の音頭もとられました。先述したように星野さんの大ファンであった赤木は早速近づいてサインを書いてもらうようお願いしました。

 ところが「こんなパーティでサインを頼むとは何事だ。」とすごく怒られてしまいました。燃える男と呼ばれ,中日の監督時代には試合の乱闘で本来なら選手を引き留める役目でありながら「かかってこんかい。」と率先して乱闘に加わっていたあの星野さんですから,目の前にしたその迫力や怖さといったら言葉では表現できません。それでも「書いてやるから早く渡さんかい。」と言われ,おそるおそる色紙とサインペンを手渡そうとしたところ「(サインペンの)キャップを外さんかい。」とまた怒鳴られ,私は自分の体が固くなるのを感じました。

 写真のようになんとかサイン色紙を頂きましたが,憧れの人にさんざん怒られて私がしばらく落ち込んだことは皆さんが想像される通りです。あらためてサイン色紙を見てみると,字体は崩れていますが「星野仙一」と書いてあって,左上に一部だけ読めない部分がありました。「なんて書いてあるんだろう?」長らくその答えはわからなかったのですが星野さんの死後,ある記事を読んで謎が解けました。

 「夢」 それは星野さんが好んで使われた言葉だそうです。疲れてもいたでしょう,怒ってもいたでしょう。そんな時にでも自分の名前以外に一言加えて頂けたなんて。星野さんのことを,厳しい中にものすごい優しさがある,と多くの方がその人柄を評しています。私はそんな星野さんの一面に直に接することができた感動でしばらく身が震え涙が出そうになるほどでした。

星野仙一氏のご冥福を心より祈ります。合掌。