2019年8月6日火曜日

皮膚疾患マメ講座 第23回 手足口病


このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。



 今年は手足口病が流行しています。国立感染研究所によると令和元年7月8~14日の1週間で全国3000の小児科で手足口病の報告数が約4万人,1医療機関あたり12.64人でこれまでの最多数を記録したようです。


 皮疹は手掌,足底,口腔内に楕円形の小水疱が生じるのが通常型なのですが,別のタイプに四肢,臀部などにも拡大して生じる重症型もあります。現在流行しているのは重症型だろうと言われています。 


<原因ウイルス>エンテロウイルスとコックスウイルスで,それぞれいくつかのタイプがあります。だから複数回発症する可能性があります。潜伏期間は35日です。


<感染の仕方,感染予防>ウイルスを含んだ唾液やくしゃみ,咳,そして排便,またそれらを触った手からうつります。感染予防にはまず手洗い。おむつ交換後,排便後,あるいはそうでなくてもこまめに石鹸を使って手洗いしてください。できればタオルは共有しないほうがいいです。

マスクも有用なのでおすすめです。ただ子供さんはいやがることもあります。できるだけマスクをしましょう。水疱内にも一応ウイルスがいるようなので患者さんは握手やタッチも控えましょう。


<全身症状と治療法>発熱することがあります。発熱でなくても脱水症状をおこすことがあります。水分をよく補給してください。口腔内にびらん,潰瘍ができると痛くて食事が摂れないことがあります。食事はゼリーなど軟らかいものにして,それでも食べれないなら水分補給だけでも仕方ないと思います。

 基本的にウイルスを退治する薬はありません。症状に対して対処療法をするしかないのです。

教科書的には数日で回復するとされていますが,ピンからキリまであるようです。

 また注意が必要なのは脳炎や髄膜炎になることです。38.5℃以上の発熱の他に吐き気や頭痛があれば皮膚科をとばして小児科に行ってください。


<出席停止期間>はっきりした出席停止期間が定められているわけではありません。基本は「症状が改善して安定するまで」となります。

①発熱がある時は登園してはいけません。解熱して1日くらいしてからがいいでしょう。②元気がなかったり,咽頭痛,下痢がある時,それから口腔内のびらん,潰瘍があって普段の食事が食べれない場合も登園しないでください。

 約1ヶ月は糞便にウイルスがみとめられるため,登園後もその間は排便後やおむつ交換時に保育士や患児の手洗いが必要です。

<その他>手足口病感染後約1ヶ月後に2枚爪になることがよくあります。

コーヒーブレイク 第23回 研究会の幹事を務める

 令和元年721日大阪で第107回関西真菌懇談会が開催され,私が幹事を務めました。

今までも座長は何度もしたことがあるのですが,会頭にあたる役割を経験した事は初めてだったので結構緊張しました。一般演題5題と特別講演1題全てに司会をしなくてはならなかったからです。


 この会は真菌,すなわちカビの感染症を扱っている研究会です。第107回という数字からもわかるように伝統のある会なのです。一般演題もとても珍しくて興味津々の症例報告ばかりでした。関西ろうさい病院の福山先生がハリネズミから感染した白癬の症例,堺市の東先生がチワワから感染した白癬の症例を発表され,天理よろづ病院の田邉先生がなんと日本で40年ぶりに発見された黄癬の症例を報告されました。


 特別講演は赤木の恩師でもある島根大学皮膚科学教室の森田栄伸教授に,白癬菌が人間に侵入しようとしたときそれを防ぐ働きのある抗菌ペプチドについて話をされました。実はこの抗菌ペプチドは赤木が島根大学にいた時の研究課題だったものです。


 森田教授は赤木が助手(今では助教といいます)として島根大学で働いていた時期に助教授として広島大学から赴任されました。明るくてきさくな性格の方で一緒に食事に行ったり,テニスをしたり,結婚式では乾杯のあいさつもしていただき大変お世話になった方なのです。


 2次会では前述の福山先生や田邉先生とともに森田先生のリクエストで鉄板焼きの店に行きました。鉄板焼きの料理を食べながらワインのグラスを傾けるのは,まるでドラマ「ドクターX」の一場面のようでリッチなひと時でした。


私としてはこの会を成功させようと長い時間をかけて計画し,それが達成できたことに大きな喜びを感じています。私にとって近年の中で最も有意義で晴れやかな一日でした。