2013年11月7日木曜日

皮膚疾患マメ講座 第1回 ニキビ


このコーナーは皮膚病診療について赤木院長が独自の視点で解説します。

1回 に き び

 みなさん医療には「常識」といわれていることが実は「非常識」であったということがよくあります。昔両親から言われてたことやテレビの番組、コマーシャルで言われることにもあります。そうした非常識の中で今回特にお伝えしたい事は「にきびを治すには顔をよく洗うこと」というのは実は間違いだということです。

 にきびは正式には「尋常性ざ瘡」という疾患名があります。発症機序は①毛穴のつまりで毛包にアブラがたまる②ニキビ菌がアブラが好物なのでたまったアブラを食べて増殖して炎症をおこす、というものです。

以前は思春期で性ホルモンの働きが活発になり脂腺のアブラが増加する10歳代の人が患者層の中心でした。そのためあふれたアブラを取り除くために洗顔することが推奨されたわけです。このことは毛穴の汚れを取り除くという意味では正解だと思います。極端な不潔を予防するという点でもいいでしょう。しかし毛穴のつまり=毛穴の汚れではないのです。洗顔では毛穴の汚れは取り除けても毛穴のつまりは取れずにきびの改善にはつながらないのです。また必要以上の洗顔では普通の皮膚表面皮脂が必要以上に取れてしまい、その結果乾燥肌になってしまいます。洗顔回数は112回で充分、それを超える回数は乾燥肌をつくってしまうと考えた方がいいでしょう。なお洗顔で除菌できるとお考えの方もいらっしゃると思いますが、洗顔では毛包内のニキビ菌には届かないので除菌、殺菌効果はありません。

 また一部のマスコミやホームページで言われている、大人のニキビは乾燥が原因でおきる「乾燥ニキビ」というのも医学的には全く根拠がありません。我々皮膚科医も皮膚の乾燥を治す保湿剤をニキビ治療に使いますが、これは今述べたように洗顔のし過ぎで起きる乾燥肌やアダパレンというニキビ薬を使用する際におきる乾燥肌を治すために使っているだけです。保湿剤のみでニキビが治るといことはありません。

 以前は思春期の10歳代の人が患者層の中心でしたが現在は2030歳代の女性層に移ってきました。なぜこのように変化してきたかというと、その大きな原因は「化粧」によって毛穴を閉塞してしまうことです(もちろん専門的な話では毛穴特有の角化異常ということもありますがここでは省略)。現在の皮膚科診療ではアダパレンという毛穴のつまりを溶かし毛穴開存させる塗り薬があり、これによってニキビができにくい肌にすることができます。

 よってニキビの治療は①ニキビ菌を退治する内服薬、外用薬を使う②毛穴のつまりを治す治療をする、ことによりニキビの症状は改善してきます。

 ではニキビの患者さんは化粧をしてはいけないのでしょうか。本当のところを言うと化粧は控えた方がいいです。しかし実際には化粧しないわけにはいかないという女性がほとんどです。その場合には毛穴を塞がないハイポ/ノンコメドジェニック化粧品を使うことをおすすめします。またニキビ部分の化粧を薄くすると他人の視線がニキビにいかないか不安になります。このような時にはアイメイクやリップに力を入れる、あるいはイヤリングやネックレスをするといった工夫で視線をそらすとことが可能です。

 他にもチョコレートやピーナッツがニキビに悪いという説も医学的に根拠がありません。バランスよく食事していただければ大丈夫です。テレビのコマーシャルで流れるようにビタミン剤がニキビによく効くというようなこともありません。尋常性ざ瘡の治療ガイドラインにおいてビタミン剤は「処方してもいいが効果は期待できない」というランクです。

この話の内容は虎の門病院皮膚科の林 伸和先生の話を参考に書いております。