2016年5月10日火曜日

皮膚疾患マメ講座 第10回 虫刺され


このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。

虫刺されは誤解されやすい情報が多いのでまとめてみます。

1蚊に刺されるとすぐ膨らんで短時間で消退する,とは限らない。:蚊刺症には即時型と遅延型の2種類があります。即時型では上記のようになりますが,遅延型では1~2日遅れて出ますし長く続きます。大人には即時型が多く,子供には遅延型が多いようです。ダニの場合も同様です。

2蚊はいるのは夏だけではない。:蚊は意外に通年性で3月から11月は結構います。

 3家族の中で刺されやすい人と刺されにくい人がいるというのは誤解。:人によって虫に対する免疫反応が異なります。同じように刺されていても赤くならないこともよくあります。ダニなどはダニ由来の唾液腺物質に対するアレルギー反応なので個人差が大きい。

 4蜂に刺されたので針を取ってほしい。:

スズメ蜂やアシナガ蜂の針は頑丈で折れないので針が残っている心配はいりません。ミツ蜂の針は皮内に残っている可能性がありますのでチェックしますが拡大鏡で見つからない場合は大丈夫です。見つけたときには引き抜きます。

 5虫刺されを引き起こすダニとアレルギー検査のダニは別物です。:虫刺されを起こすダニはイエダニやツメダニなどで,アレルギー検査はヤケヒョウダニとコナヒョウダニです。

 6ダニ刺症は非露出部が多い。:イエダニは夜間就寝中に室内に侵入し,寝具の中に潜り込んで衣服に覆われた皮膚の柔らかい部位を選んで刺すことが多い。下腹部や腋の下,腰部や大腿内側に好発します。

 7イエダニ退治に燻煙型殺虫剤は効きにくい。:イエダニはネズミに寄生していてネズミの巣から移動して人を襲います。このようにイエダニの発生源が室外なので燻煙殺虫剤を一時的に使用するだけでは効果は少ないです。薄暗い物置部屋の頻回の掃除や,室外との連絡部に殺虫剤をまくのがいいようです。

 8刺し口からだけでは虫の種類の同定は困難:原因虫の推定はむしろ,刺された部位,地域(町中?田舎?),痛みの有無などが参考になります。中には毛虫皮膚炎のように皮疹の分布から一目で分別できるときもあります。

 9不衛生な格安宿泊施設でナンキンムシ(トコジラミ)にやられることがある。:注意が必要です。

 本内容は兵庫医科大学の夏秋 優先生の著作内容を参考にさせて頂いています。