2021年2月15日月曜日

皮膚疾患マメ講座 第29回 し も や け

 

このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。

 しもやけの正式名称は「凍瘡」といい,寒さで血行が悪くなり,手指,足趾,耳たぶなどに発症します。原因は1日の気温差が大きいことと,それに対応できない血行不良体質が関係あります。まだまだ謎の多い疾患です。

 最低気温が3~5℃前後で昼夜の気温差が大きい時に発症しやすいです。

 (内服)血行を改善するビタミンE(トコフェロール)が効きます。1日3回内服するように処方しますが調子よければ1日2回さらに1回に減量,あるいはなしにしてもかまいません。ただし1回改善しても急に寒くなると再発するので1日の内服量を臨機応変に増量してください。

 漢方薬の当帰四逆加呉茱萸生姜湯もいいのですが,結構苦くて嫌だという方も多いです。

 (外用)血行を改善する外用薬を処方します。軽症の患者様にはこれだけで奏効するのですが治りにくい患者様には内服を追加します。

 (家庭での注意)むしろこっちの方が大事かもしれません。特に1番は大事です。

1患部を温水で温める。あまり高温ではよくなくてぬるま湯がいいと言われています。温水で温めて痒くなるようなら,次に冷水で冷やして,また温水で温めてと交互につけるのがいいでしょう。

2手袋や靴下が蒸れたまま放置すると皮膚表面の温度が下がるので,洗濯時手袋や靴下をよく乾燥させるようにしてください。あるいは履いている靴下が蒸れたと思ったら乾いた靴下に履き替えるという手もあります。

3先が細い靴,ヒールが高い靴は足の趾先の血行不良を招くので控えた方がいいです。足先を締め付けないようにしてください。

4ビタミンEを含むナッツ類や植物油の摂取もいいかもしれません。

5局部を軽くマッサージするのも勧められています。さらに赤木的には全身体操をして全身を温めた方が四肢の先端の血行がより良くなるのではないかと考えています。


何だこの写真は?と思った方は、コーヒーブレイク第29回
ブラックジャックの領域に一歩近づくを読んで下さい。


コーヒーブレイク 第29回 ブラックジャックの領域に一歩近づく

 

このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。

「ブラックジャック」といえば手塚治虫先生のマンガの代表作。顔を斜めに切ったような大きな傷があり髪の毛も白と黒が半々の不気味な容姿をしているのですが,メスを握らせればその神業で奇跡を起こす史上最高の外科医です。

私も小学生の時に少年チャンピオンで毎週欠かさず読んで心を揺り動かされたものでした。医学部受験時の小論文にはブラックジャックについて作文し,おそらくそれが上手くいったのでなんとか合格したのです。

そんなマンガの中での登場人物ですが,赤木が思うにブラックジャックには3つのとんでもない特徴があります。

1)      手術代が数千万円する。

「そんな大金・・・ブラックジャック先生。」「命の値段に比べたら安いもんだと思うがね。」いやいや高すぎる。

2)      人造人間を作った。

 かの有名なピノコちゃんですね。畸形嚢腫という腫瘍の中身から1体の人間を作ってしまうのがすごすぎ,ってゆうか無理でしょ(第10話畸形嚢腫)。ピノコちゃんのネーミングはピノキオの女の子版ということで名づけられています。ピノコの顔のモデルになった女の子が登場するエピソードもあるのですが,かわいそうに病気で死んでしまいます。(第89話ふたりのピノコ)

                                    出典 ブラックジャック コミックス10巻より     ”

3)      自分のお腹を開けて自分で手術した。

 なんともクレージーな話ですが,ブラックジャックは自分のお腹に局所麻酔をして,鏡に術野を映しながら自ら開腹手術をするのです(第88話ディンゴ)!この話は小学生の私に衝撃的だったようで,医師になった今でも自分で自分を手術し失敗して大出血する悪夢を見てうなされることがあります。

 この3)が,今回のタイトルに関係する部分です。そんな自分で自分を切るようなまねは絶対しないでおこうと思っていたのですが,足底にウイルス性のイボが2か所もできたので,写真のごとくイボの表面をカミソリで切って液体窒素で凍らせる処置を何度か行いました。イボの患者様には日常的に施行している処置ですが,自分自身に行うにはやはり勇気がいるものです。痛みを感じたり出血することもありましたが,数回施行して治すことに成功しました。

 ブラックジャックとはレベルが違うだろ,とつっこまれればその通りなのですが,自分で自分の体を傷つけることは昔から夢に見るくらい怖かったことです。刃物の冷やっとした感覚とか,患者様の感じる恐怖を同じように体験できたのは良かったです。