2014年10月30日木曜日

皮膚疾患マメ講座  第4回 多汗症


❃❃❃ 皮膚疾患マメ講座 

第4回 多  汗  症

今回は多汗症のお話です。精神的緊張状態がきっかけで手掌,足底,腋などに日常生活に支障があるほどの大量の汗をかくのです。「試験の時,汗で試験用紙が濡れてしまい文字が書けない。」のだけれども他院では治療してもらえなかったという話をよく聞きます。

当院で取り入れている治療は塩化アルミニウム溶液の外用です。11回寝る前にむれた手足を洗浄し,その後十分乾燥させてから塩化アルミニウム溶液を外用し,翌朝水洗いで落とします。1回の外用では治りませんが効果が出るまで毎日,およそ2~数週間続けます。一度改善したら多汗時のみ,あるいは週1~2回くらいの外用で抑えられます。日中に外用してもいいのですが発汗があるため効果的ではありません。時に塩化アルミニウムにかぶれる人もいますが,その時は濃度を薄めて使います。塩化アルミニウム溶液はスプレー式で11290円。当院受付で販売しています。

それでも治りにくい場合は塩化アルミニウムの密封療法を行います。手順はだいたい上記と同じなのですが,寝る前に布手袋をはいて手袋の手掌側に塩化アルミニウムを塗ります。その後ゴム手袋を上から二重にはいて密封させるのです。こうすることにより塩化アルミニウムが蒸発しにくくなり長く皮膚に付着するようになるのです。

内服は交感神経を抑えるプロ・バンサイン®がありますが希望者だけに処方しております。目の調節障害,口渇,便秘,排尿障害といった副作用も心配なのであまり使わないようにしています。

生活上の注意にはどのようなものがあるかというと①脱水しない程度の飲水制限②適度の運動とカロリー制限による肥満の解消③香辛料,コーヒーの過度の摂取を避ける,といったところでしょうか。

それ以外の当院でやっていないような治療もあります。①イオントフォレーシス:洗面器にはった水道水に手足をつけて,水に通電,つまり電気を流します。大学にいた時にやっていましたが電気がビリビリ流れるのが怖かったです。効果もぼちぼちだったような。②A型ボツリヌス毒素療法:腋の多汗症の人に使います。腋にボツリヌス毒素を局所注射するのです。しかも25か所も注射しないといけないので大変そうです。やれないことはないけどかなり特殊ですね。③内視鏡的胸部神経遮断術(ETS):最重症例で行うようです。おすすめではないです。④ミラドライ:電磁波の熱エネルギーで皮膚の下2~3mmにある汗腺組織を破壊します。厚労省の認可はありませんので,保険外診療で美容外科などにて高額治療で行っています。

コーヒーブレイク 第4回 「三国志」の武将,誰が好き?


コーヒーブレイク

 
第4回 「三国志」の武将,誰が好き?

 皆さん,「三国志」って知っていますか?そう中国のお話で,3つの国「魏」,「呉」,「蜀」が覇権を争って戦う話です。知らない人も多いでしょう。そんな人のために書いています。当院では中国人の患者さんに話題提供のために「三国志の武将,誰が好き?」と質問しています。今のところ50人に聞きました。そのアンケートの結果を報告します。これまで三国志を全然知らないという人もこれをきっかけに読んでみてはいかがですか?

 第1位は「諸葛亮孔明」断トツの20票。理由:頭がいいから。主人公(といっていいのか)の劉備玄徳は孔明と出会うまでは負けて,負けて,全然だめでしたが,孔明が軍師になって作戦を考えるようになってから勝ち続けるようになり,遂には「蜀」の皇帝になります。物語全体を通しても孔明はスーパースター的な存在です。おそらく中国の人も孔明の魔術に酔いしれているのでしょう。赤木の好きな場面は最初の戦い,博望坡(ハクボウハ)の戦いです。

2位は「劉備玄徳13票。理由:主人公で正統派だから。漢王朝の復興を大義として戦っている正義の味方です。横山光輝さんの漫画では一番格好良く描かかれています。若い時は筵(むしろ)売りの苦労人でした。関羽や張飛をはじめ劉備軍はこの人が好きで集まったのだろうなと思います。一番好きな劉備の言葉は「龍が滝壺に潜んでいるのは,時期を待ち天に昇らんとするがため(今は恵まれず苦労しているが,その苦労によって後の成功がある)。」

この1位,2位が過半数で,票数が少なくなって第3位は「曹操8票。理由:強いから。一言で言えば劉備のライバルと役どころで中国の半分以上を占める「魏」の実質の権力者になります。昔の三国志では悪役の曹操ですが,実際には優れた政治家かつ文化人で近年は再評価されています。中国の人も単に権力が強いから好きという訳ではなく,昔のしきたりにとらわれず新時代を切り開く先見の明に魅力を感じているようです。しかし私にとっては悪い曹操も魅力的で,好きなシーンは「呂伯奢」です。自分が殺されると勘違いした曹操は呂伯奢の家族を殺し,恨まれるのが嫌で呂伯奢を殺し,後で「しまった。呂伯奢の酒も盗めばよかった。」とうそぶきます。

4位はさらに票数が下がって「関羽4票。赤ら顔と長いアゴヒゲがトレードマーク。桃園の誓いで劉備,関羽,張飛は義兄弟の契りをかわします。強いだけでなく知識人でもあります。しかし中国の人が好きなのは義理堅く男気があるところでしょう。私が好きなシーンは赤壁の戦のラストで敵の曹操を昔の恩義から見逃してしまうシーンです。

5位は蜀軍のプロフェッショナル「趙雲子龍3票。実は私の好きなキャラはこの趙雲です。長坂坡(チョウハンハ)の戦いで劉備の赤ん坊である劉禅を救い鎧の中にいれて多数の強敵に囲まれながら戦うシーンが有名です。しかし個人的に好きなのは「街亭の戦い」後の人間的な素晴らしさを感じる所です。こてんぱんに蜀軍が負けたその中で唯一手柄をたてた趙雲。その趙雲に孔明が褒美を与えようとしますが,彼は断り「それを蜀全体に分け与え,敗戦で貧しくなった人々の一時の灯にしてくれ」と泣かせるセリフを言います。こんな趙雲に1票を入れた人には思わず握手を求めてしまいます。

6位は「周瑜2票。理由:美しいから。元々周瑜は選択肢に入っていなかったのですが,熱狂的な女性ファンがいて2票入りました。逆に選択肢に入っていながら1票も入らなかった最下位は「張飛0票。やっぱりね。酒乱で乱暴者だから。劉備,関羽との義兄弟の末弟だけど圧倒的に人気がなかったですね。女性の中には「この人だけはイヤ。」という方もいらっしゃいました。

2014年4月30日水曜日

コーヒーブレイク  第3回  続・大河ドラマに出演!!


コーヒーブレイク

 

このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。

 続・大河ドラマに出演!!

 皆様、私赤木が出演した4月20日放送「軍師官兵衛」第16話「上月城の守り」はご覧いただいたでしょうか。え、見ていない?そんな方には是非再放送で見て頂きましょう。3回も登場しています!え、見たけど全然わからなかった?それはそうでしょう。私本人もあとからビデオのコマ送りでやっと確認できたぐらいですから。

 毛利との戦いに備えて石田三成陣頭指揮のもと豊臣軍の本陣を書写山円教寺に移します。この引越しのシーンで2回登場します。1回目は書写山円教寺が登場して、荷車がガラガラと大きな音を立てて寺内に入っていく最初のシーンです。このとき寺の奥の方、画面中央やや右で、槍を受け取る兵士。あまりにも小さくまた登場時間が非常に短いうえ幟(のぼり)の旗に姿が隠れてしまうため私本人以外は絶対分からないと思います。以前大河ドラマのエキストラとして出演した経験のある人に聞いた話では「エキストラとして出演した本人がかろうじて確認できる程度。家族でも分からない。だから撮影の時に何をやったかをしっかり記憶していないと判別すらできない。」ということでした。まさに自分が「あー、そういえば槍を受け取っていたなあ。」と記憶していなければ自分でも自分だと分かりませんでした。

 いよいよメインの2回目の登場シーン。石田三成が「待て、(荷物の)中をあらためる。」と言って荷物を点検するシーン。田中圭さん演ずる三成の後方でわら袋を肩に抱え、左から右へ走り抜ける足軽集団。その2番目で、1番目の兵士よりすこし遅れて駆けている兵士が私赤木です。カメラのピントが三成に合わせてあるためピンボケなのですが、これは皆様にも充分視認可能です。

 最後に登場するのは、織田信忠率いる織田援軍を豊臣軍が円教寺に迎えるシーンです。私は豊臣軍の一員として大人数の中で起立しています。しかし後方から撮影されているため後頭部しか見えず当然誰が誰なのかわかりません。テレビでは大人数に見えますが実際は50人ぐらいのエキストラが何回も何回も撮影したものをCGで組み合わせたものです。そのため何人もの赤木が同一画面に映っているはずなのですが。思い起こせばこのシーンの撮影は苦しかった。監督から「下を向いて。動かないでください。鉄砲は重いですけど腕で固定してください。」それで1分撮影。「はい、10m左に移動してください。はいもう一度、下を向いて、動かないで・・・」それでまた1分撮影・・・。これを何回も繰り返すのです。テレビ撮影というと華やかな世界に思えますが、かなり地味な作業なのですね。あー、しんどかった。

 私がエキストラとして出演した第16回ですが、もし視聴率が史上最低だったらどうしよう?と余計な心配をしていましたが実際は意外にも高視聴率でした。これは私が出演したためではなく(当然ですが)、光姫を演じる中谷美紀さんが涙を流す、悲しいシーンのある回が視聴率は高いのだと思っています。

 この回も光姫とその兄、金子ノブアキさん演じる毛利側に寝返った櫛橋左京進の兄妹別離のシーンがありました。戦のない世で再び兄妹が仲良く暮らす日を夢見る光姫に対し、普段は官兵衛に底意地の悪い態度を示す左京進が涙を浮かべつつ優しい微笑をもって光姫を諭すように決意宣言をします。

「それは叶わぬ。わしとお前は別々の道を歩むのだからな。光、今生の別れだ。今この時から我らは兄妹の縁を切る。さらばだ。」

こんな泣くシーンの方が下手な戦闘シーンよりドーンと視聴率が上がると思います。軍師官兵衛では今後もこんな泣くシーンが続きます。ご期待ください。

本来なら4年に1回の世界的なお祭りFIFAワールドカップの話も書きたかったのですがとてもスペースがありません。またいずれ。頑張れザックジャパン!


2014年4月8日火曜日

皮膚疾患マメ講座  第3回 尋常性白斑


❃❃❃ 皮膚疾患マメ講座 ❃❃❃

このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。

第3回 尋 常 性 白 斑

今回は尋常性白斑のお話です。難治なことで有名な疾患で、他の皮膚科で「一生治らないよ。」と言われた患者様の話も聞いたことがあります。しかし当院には姫路市に1台しかないエキシマライトという秘密兵器の機械があります。このエキシマライト治療によって赤木皮膚科では尋常性白斑がかなり治るようになってきました。

尋常性白斑は部分的に皮膚の色が抜けて白くなる病気で「しろなまず」ともよばれます。数が多いとまだらもようになります。命に別状にないものの外観の見栄えが悪く患者様は心理的なストレスを負うことになります。
原因は免疫異常によるものです。通常免疫というのは細菌やウイルスをやっつけるものですが、免疫異常があるため誤って色素を作る細胞を攻撃するようになり色素ができなくなるため色が抜けてしまうのです。

軽症ではステロイド外用剤や外用免疫抑制剤で治ることもあります。他にビタミンD3外用剤が使われることもあります。
しかし治療の基本は紫外線療法です。紫外線治療といえば、ナローバンドUVBという機械が多くの皮膚科医院で用いられています。他の疾患ではナローバンドUVBも治療効果があるのですが、残念ながら尋常性白斑に対しては治療効果は少ないといえるでしょう。このナローバンドUVBの治療波長は310nmなのですが、これが308nmに変更したものがエキシマライト。波長がほんのわずかに異なるだけで非常に強力かつ副作用が少ないタイプになりました。当院にはナローバンドUVBの機械もありますから、エキシマライトと尋常性白斑に対する治療効果を比較することが可能ですが差は歴然。エキシマライトを購入してからは尋常性白斑の白斑部に色がつくようになってきました。

しかしそれでも広範囲の白斑の患者様では治療に難渋することもあります。エキシマライトの開発は尋常性白斑の治療に光明が差しこんだと言えますが完全ではありません。今後の研究の課題です。
治療ではありませんがダドレス®をはじめ白斑を隠すメーキャップ化粧品も開発されています。通院できない方あるいは治療効果の少ない方には日常の心理的ストレスを軽減していただくためにこうしたメーキャップも必要と思われます。

 

2014年1月28日火曜日

皮膚疾患マメ講座   第2回 みずいぼ


皮膚疾患マメ講座 

このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。

第2回 み ず い ぼ

水いぼは正式には伝染性軟属腫といい、ポックスウイルスの1種によって感染して発症します。治療において「放置して自然治癒を待つ」と「水いぼを摘除する」の相反する方針の病院が存在しますが赤木皮膚科は後者になります。

水いぼを放置して比較的短期間で自然治癒する幸運な場合もありますが、自然治癒しない場合は1年以上経過しても治らないことがあります。また最初は少数であった水いぼが、数えきれないくらいに増加してしまうこともしばしば経験します。水いぼを見て「ほっといたらいいよ。」と簡単に言うお医者さんがいますがその後をフォローしません。だからそのあと数が増えて「あの時取っておけばよかった」と後悔することになりかねないのです。

もし冬に水いぼができて放置している間に数が増えて夏になった場合、子供の患者さんは可哀そうです。幼稚園で園児がプールで楽しく水遊びしているのに、水いぼがあるため他の子に感染しないようプールに入れなかったりします(園によっては工夫してプールに入っていますが)。これは単純に水遊びができないから暑いということだけではなく、精神的に傷つくことにもなります。

水いぼの摘除はすごく疼痛を伴うのでしない方がいいという意見もあります。しかし当院ではシール型の麻酔をするので他の病院で取るようには痛くありません。また水いぼの摘除で瘢痕が残る意見もあり、確かに一部の患者さんで水疱瘡のような瘢痕が残ることもあります。しかしそうなる患者さんの頻度は非常に少ないのです。

これまでの多数の水いぼの症例の積み重ねの経験をふまえ赤木皮膚科クリニックでは水いぼの摘除治療を積極的に取り入れています。ここでは紹介しきれないのですが、他病院ではやってないようなオリジナルの工夫もあります。

さて、そんな私でも水いぼの数が50を超えると摘除すべきかどうか悩みます。そんな数だと患者様(たいていは幼少児)がどうしても摘除処置に対して苦痛を感じます。こうした場合には「取らないで治す」方針もありだと思います。当院ではヨクイニンというハトムギ茶を薬にした漢方薬を処方します。もちろんこれを2週間飲んだからといって水いぼが治ることはありません。しかし1年で自然に治るところが9か月ぐらいで治すことができます。

水いぼの患者様はぜひとも当院にご相談ください。