このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。
「ついに・・。」
これは石田三成役の岡田准一さんが劇中で使うセリフなのですが,私としても映画公開にあたり心でつぶやくセリフでもあるのです。そう,私がこよなく愛し人生で最も繰り返し重ね読んだ司馬遼太郎さん原作の映画「関ケ原」が8月公開になるのです。
原田眞人監督が約10年かけて構想した映画です。映画通の方はご存知だと思いますがこの原田眞人監督は「ラストサムライ」に出演しハリウッド映画の迫力ある戦闘シーンを経験されているのですが,それに勝るものを日本映画でと考えておられたようです。
こんな思い入れの強い作品となればまたまた性懲りもなくエキストラとして参加しなくてはなりません。
早朝4時に集合,のはずが直前の前日に3時半集合に変更。いやいやそれぐらいはあることです。文化センターで茶色のドーランを顔に塗られ昔の衣装を着ればあっという間に戦国時代の人間に早変わりです。中には茶色ではなく顔面を灰色に塗られている人もいます。どうしてか訊いてみると
「僕,生首になるんです。」
「・・・・・・・・・。」
そんなこんなで撮影地の姫路城に朝6時出発。姫路城は朝8時に開くのでそれまでに撮影を終わらさなければいけないのです。撮影内容を書くのはやめておきますが朝の撮影は無事終了し,文化センターに8時過ぎに戻ります。そのあと待ち時間が長い長い。次は夕方の撮影になるのですが,そんな予定は知らされていないので待つのが長い長い。結局7時間待つことになります。
待っている間やることもないので他のエキストラさんとお話ししたりして時間をつぶします。そんな待ち時間のお楽しみと言えばお弁当,いわゆるロケ弁と言われるものでこれは結構おいしいし量も多めです。みんなが喜んで食べているにもかかわらず,廊下のはずれのロビーで食事もしないで携帯電話をかけているものの相手がつながらないことを繰り返している孤独な人がいます。何やってるんだろう?覗き込んでみると主役の岡田准一様でした。こんな時は気軽に声をかけてはいけません。ましてや電話相手が誰なのか,気になっても訊いてはいけません。
そんなこんなで待ち時間を過ごします。おしゃべりもし,昼寝もし,じっと部屋に閉じこもるのはなかなか大変です。外出は禁止です。そりゃ戦国時代の武士が普通に道を歩いていたら目立ちますもんね。
7時間が経過し午後3時になってやっとお呼びがかかります。今まで何もなかったのに「急いでロケバスに乗ってください。急いで,急いで。」と慌ただしくせっつかれます。じゃあもっと早く段取りつけてよ,と言いたいところですがそんなことはエキストラの立場では言えません。いやあ映画撮影というのは大変なもので素人には先行きが想像もできません。こんなにせっつかれたのにまさかこのあと1時間半もバスの中で待たされることになろうとは。
夕方の撮影は3分で終了しました。えっ,これだけのために7時間+1時間半待ちだったの?そんなことを考えてもエキストラは文句を言ってはいけません。そんなものですから映画撮影とは。
この後,夜の撮影になります。場所は姫路城の裏手にある知る人ぞ知る「鷺の清水」で行われました。撮影内容は秘しますが後日再訪問してみると,目立たない場所なんだけれど撮影のことが思い返され懐かしく感じられました。
夜の撮影が終了し,皆さん疲れ切った面持ちで文化センターに移動。衣装を脱いで化粧を落とし解散になりました。なんか一日損したような気分でした。なのに後日映画の予告を見るとものすごく格好良くなっているから驚きです。この映画のエキストラに参加しておいてよかった。水野晴郎さんは昔言ってました。「いやあ,映画って本当にいいもんですね。」