このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。
今回は病気とまでは言えないかもしれませんが,特徴ある疾患をお話します。
長時間入浴すると手がシワシワになってふやけることがあると思います。これぐらいなら正常範囲だと思われます。
ですが,もう少し症状が強くなり,手のひらが白色にふやけて,一皮(ひとかわ)剥けた状態になるのであれば少し異常かもしれません。手のひらだけでなく足の裏も同じ症状になることがあります。ですが入浴後手足が乾燥するとこの症状は消失してしまいます。
こうした状態になる疾患をA P K(aquagenic palmoplantar keratoderma:日本語に訳すと「水につけると掌蹠がふやける」)といいます。
思ったよりありふれた疾患で当院にも多くのAPKの患者様がいらっしゃるのですが,残念なことに正式な日本語名称はなく,外国語で表現される皮膚病の一つなのです。
かなり独特で特徴的な症状ですが,病院に行くほどではないと考え,密かに悩んでおられる方もいらっしゃるかと思います。
原因については不明なところが多いのですが,汗管の異常があるのと何らかの外的刺激によって角層のバリアが破壊されて水の経皮吸収が増加するためと考えられます。
治療についてです。軽症であれば放置でいいです。しかし薬が必要なら,角化を溶かす上に保湿効果もある尿素クリームがこれまでで一番効果があるように赤木は思います。