2016年1月27日水曜日

皮膚疾患マメ講座 第9回 保 湿 剤


寒い時期になると乾燥肌が目立つようになります。今回は保湿剤の種類について説明しましょう。

1)ヒルドイドソフト

最も有名な保湿剤です。一番べたっとして瞬間的な保湿効果が高いのは白色ワセリンなのですが,残念なことに皮膚からの水分蒸散を抑えることができません。そのため水分蒸散を抑え総合的に最も保湿効果が高いのはヒルドイドソフトです。欠点としては値段が高いことと,血管拡張作用があるので頬っぺたなどにつけると一時的に皮膚の色が赤くなります。これが一時的であればいいのですが長時間続くことがあり使いづらい方もいらっしゃいます。また若干の刺激があります。ジェネリック製品でヘパリン類似物質油性クリームも使っています。

クリームタイプの他にローションタイプもあります。効果はクリームの方が高く冬にお勧めです。しかし夏は伸びが良くて使いやすいローションもいいです。一部スプレータイプもあります。

2)尿素系クリーム

ヒルドイドソフトで皮膚が赤くなったり刺激感が気になる人には,尿素系クリームがおすすめです。当院ではベギンクリームを使っています。市販されているウレパールと同様の品です。外用時にとても伸びがいいのが特徴です。ヒルドイドソフトには劣るものの白色ワセリンと同等かそれ以上の保湿効果があると考えられます。

3)白色ワセリン

総合的な保湿効果としてはヒルドイドソフトに劣るものの白色ワセリンには別の魅力があります。

何といっても値段が安い。アトピー性皮膚炎に対して九州の大学でやっている治療として,入浴後乾燥の強い全身にたっぷり白色ワセリンを塗ってその後湿疹部にステロイド外用剤を塗るという方法があるのですが,白色ワセリンがとても安いからできることです。また化学物質が何も入っていないことから種々の外用剤にかぶれる方にはとても安心という利点があります。欠点は最初にも書きましたが皮膚からの水分蒸散を抑えられないので総合的には保湿効果が落ちることです。

 一長一短がありますが,基本的には1)→2)→3)の順におすすめしています。しかしその人の皮膚に合う合わないといった好みがあるのでケースバイケースで選択する必要があります。

コーヒーブレイク 第9回 シュレーダー教授に再会

このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。
 昨年の11月,母校である島根大学医学部皮膚科の主催で皮膚アレルギー学会が松江で開催されました。

 長い間暮らしてきた島根県でお世話になった先生方に挨拶する為当然参加してまいりました。懇親会はフォーゲルパークといって鳥専門の動物園(神戸でいえば花鳥園みたいな施設)で行われたのですが,ペンギンやフクロウと写真を撮ったり,神話のヤマタノオロチを芝居にした石見神楽(いわみかぐら,写真)を観劇できたりと楽しいイベントがいっぱいでした。山陰地方ならではの山海の珍味がテーブルに並び,また面白いところでは鳥取砂丘から最近の名物である砂場コーヒー(呼び名がスタバコーヒーとまぎらわしいところも面白いですね),砂場カレーが意外に美味しかったです。あまり知られてないかもしれませんが松江はお茶が有名で茶菓子なども登場しました。

 さてタイトルにも出て来たシュレーダー教授は基調講演のためわざわざドイツのキール大学から招待されました。このキール大学こそ私赤木が留学していた大学なのです。ですからシュレーダー教授は留学中指導していただいた恩師で,とても優しく丁寧な方です。

 しかしドイツ留学も楽しいことばかりではありませんでした。なにせ会話が英語(ないしはドイツ語)ですから,難しい話になると会話についていけません。研究の技術を身につける事が目的なのですが,元々の基礎力がなかったため非常に苦労しました。そんなこともあり,帰国してからはシュレーダー教授には何も連絡しておらず大学をやめて開業したことも伝えていませんでした。

 そんなうしろめたい気持ちがある中,シュレーダー教授が来日されると聞かされた時はとても驚きました。かといって会わないわけにはいきません。一念発起しドイツ語を猛勉強して現在の状況を説明できるようにまで準備しておきました。

 そしていよいよ実際に対面する時がやってきました。対面早々「ちゃんと勉強しているか?君が研究してた内容はモリタ教授が完成させてプロナス(非常にレベルの高い学術雑誌)に載ったけど読んだか?」と話を切り出されたのには戸惑いました。心の中で思わず「いきなりかよ。」とつぶやきました。そうなのです。前述したとおりシュレーダー教授はとても優しく丁寧な方なのですが学術的な会話が多く,ついていけなくなることがしばしばあるのです。いい人なのですが困ってしまう人なのです。

 幸いにも研究と無縁なシュレーダー教授の奥様が我々の会話に交ってくれたおかげで学術的な話題から離れ,私の近況報告をすることができました。よかったよかった。シュレーダー教授はその後も他の研究者と立ち話で討論を始めるので直接話をすることはほとんどできませんでしたが,シュレーダー教授の奥様とドイツ語でいろいろ話をすることができて楽しかったです。実は奥様もドイツ語しか話せないので話し相手がいなくて寂しかったらしく丁度良かったみたいです。
 今思い出しても「何とか乗り切ったぞ。」という気分でいっぱいです。
 

皮膚疾患マメ講座 第8回 アトピー性皮膚炎とプロアクティブ療法

このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。

 プロアクティブと聞くとテレビで通信販売しているニキビ治療薬を想像しますが今回の話に出てくるプロアクティブとは別物です。アトピー性皮膚炎に関係した話です。

アトピー性皮膚炎は慢性の湿疹が生じ,いったん治っても種々の要因によってかゆい湿疹が再発してきます。かといって治療薬であるステロイド外用剤には一定の副作用の恐れがあり,漫然と長期に使用することはためらわれます。

最近アトピー性皮膚炎の再発再燃を抑える治療法で単純だけど画期的な方法が開発されました。それがプロアクティブ療法です。

今まではステロイド推進派の赤木でさえ,アトピー性皮膚炎の患者様に「湿疹にはステロイド外用剤を使用すべきですが,湿疹が治ったら副作用の心配を避けるためステロイド外用はやめましょう。」と説明していました。しかし湿疹が治りすぐステロイド外用をやめてしまうと短期間で再発してしまうことがよくあります。せっかく外用剤を塗布して治しても,また出てきたらがっかりしますよね。何かいい方法はないかなと思っていたところにプロアクティブ療法です。

プロアクティブ療法とは見た目がきれいになってもステロイド外用剤の使用を中断せずもうしばらくの間使い続けるというもので再燃を防ぐ効果があります。

どうですか。すごく単純なことだけど充分有り得る話だと考えます。今回の話は大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター皮膚科部長の片岡葉子先生にうかがったものです。片岡先生によるとアトピー性皮膚炎の病勢がある時にはTARC(ターク)という物質が皮膚や血中に現れるのですが,治ったばかりの皮膚は見た目がきれいでもTARCがまだ残存し湿疹のかけらが残っているそうです。この時点でステロイド外用を中断すると湿疹が再燃してきます。逆にプロアクティブ療法に従い一定期間ステロイド外用を続けると残存したTARCも消えて本当の意味で治すことができます。

他の話で例えると,キャンプの時たき火をしっかり消火していないとその残り火が再燃し,ひどい時には山火事になることでしょうか。

ここでもうすこし具体的なスケジュールを書いておきます。

1)            寛快導入期(約2か月):ステロイド外用剤を丹念に塗布して湿疹を治す。

2)            維持期(14週間):湿疹が軽快してもステロイド外用剤を連日塗布。

3)            漸減期:保湿剤等を併用しつつ,湿疹がなくても週に12回はステロイド外用剤を塗布することはOK

 1の寛快導入は一般的な治療期間のことです。2の維持期が今回の最も注目すべき部分で,いったん湿疹が治ってももうしばらく同じ外用を続けることが大事だということです。さらに3の漸減期も画期的なことと考えられ,調子が良くても週に12回はステロイド外用剤を塗布して予防に努めてもいいということです。

 まとめますと,アトピーの人でいったん治ってもすぐ再発しやすい人は湿疹が治ってもしばらく外用を続けることが大事で,もっともっと治っても再発予防のために週に12回ステロイド外用してもいいということです。

コーヒーブレイク 第8回 なぜかトイストーリーブーム

 我が家で「トイ・ストーリー」が今頃になってブームです。数か月前に映画「トイ・ストーリー3」がテレビで放映されたことがきっかけで,その後友人から別の話のビデオも借りて子供たちがそれを観て夢中になってしまいました。トイ・ストーリーはディズニー社が製作したCGアニメ映画で現在パート1から3まであります。おもちゃの人形が人間の見ていないところでは自由に動き回って活動している,だけど人間が来ると慌てて元の位置に戻って電池が切れたように動かなくなるというルールの世界観で構成されています。自分の家にあるおもちゃの人形が生きて動いているそんな夢のある物語なのです。

 主人公は保安官人形のウッディで,その相棒がスペースレンジャ―のバズ・ライトイヤー。この二人が中心になって物語が進むのですがそれ以外にも可愛らしくて魅力ある脇役キャラクターが数多く登場し大活躍して盛りあげるのです。私はこの話の好まれる理由はこれらおもちゃ達の仲間関係がとても友情あふれる美しいものだからだと思います。

 ところがこのトイ・ストーリー人気は我が家に限ったことではなく全国レベルであることが判明しました。先日ディズニーリゾートに家族で行ってきました。ディズニーシー内にトイ・ストーリーマニアというトイ・ストーリーに関連したアトラクション(ゲーム施設のことです)があるのですが,昼過ぎに行くと2時間待ちです。もっと空いてから入ろうと思い2時間後に再度来てみるとさらに増えて3時間待ち!これは待つのは大変だと判断し,次の日朝一番でもう一度来ることにしました。これが裏目にでてしまいました。

 次の日開園時間の30分前に行ったのですがまずディズニーシーの入り口で既に長蛇の列。入園するのに時間がかかり,それから急いでトイ・ストーリーマニアに向かって走ります。よく見ると他の人も目的は同じ。まるでマラソン大会のようになっています。それでやっと待つ列にたどり着くと既に4時間待ち!結局最初に来た時の2時間待ちが一番短い待ち時間だったわけです。しかもファストパス(ディズニーリゾート特有の,列に並ばないで入れる優先チケット。ただしこのパスを手に入れるためにも並ぶことが必要なこともあり。)も入園開始時刻からわずか30分で1日分が終了!なんともはやものすごい人気です。

 またディズニーランドにも別の日に行ったのですが,ここにはバズ・ライトイヤーのアストロブラスターというアトラクションがあってここも3時間半待ち!皆さん何が楽しくてこんなに待っているのですか。いや,他人のことは言えないのですけど。

 だいたいディズニーシーとディズニーランドの両方にアトラクションがあるという事自体すごいことですよ。トイ・ストーリーだけだと思います。クマのプーさんだって,アラジンだってどちらかだけです。他にもディズニーランドでパレードを2回見ましたが必ずトイ・ストーリーの山車(フロートと言うそうです)  はあります。また売店ではグッズが山ほど売られています。何度も言いますがすごい人気です。

 これを機会にまだご覧になっていない方もトイ・ストーリーをご覧になってはいかがですか。パート2のアクションシーンも好きですが,なんといってもパート3がおすすめで大人が見ても充分楽しめるエンターテイメント作品になっています。パート4も製作中のようでこれまた楽しみですね。

 ちなみにディズニーランドで一番好きなアトラクションはイッツ・ア・スモールワールドです。