2016年1月27日水曜日

皮膚疾患マメ講座 第8回 アトピー性皮膚炎とプロアクティブ療法

このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。

 プロアクティブと聞くとテレビで通信販売しているニキビ治療薬を想像しますが今回の話に出てくるプロアクティブとは別物です。アトピー性皮膚炎に関係した話です。

アトピー性皮膚炎は慢性の湿疹が生じ,いったん治っても種々の要因によってかゆい湿疹が再発してきます。かといって治療薬であるステロイド外用剤には一定の副作用の恐れがあり,漫然と長期に使用することはためらわれます。

最近アトピー性皮膚炎の再発再燃を抑える治療法で単純だけど画期的な方法が開発されました。それがプロアクティブ療法です。

今まではステロイド推進派の赤木でさえ,アトピー性皮膚炎の患者様に「湿疹にはステロイド外用剤を使用すべきですが,湿疹が治ったら副作用の心配を避けるためステロイド外用はやめましょう。」と説明していました。しかし湿疹が治りすぐステロイド外用をやめてしまうと短期間で再発してしまうことがよくあります。せっかく外用剤を塗布して治しても,また出てきたらがっかりしますよね。何かいい方法はないかなと思っていたところにプロアクティブ療法です。

プロアクティブ療法とは見た目がきれいになってもステロイド外用剤の使用を中断せずもうしばらくの間使い続けるというもので再燃を防ぐ効果があります。

どうですか。すごく単純なことだけど充分有り得る話だと考えます。今回の話は大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター皮膚科部長の片岡葉子先生にうかがったものです。片岡先生によるとアトピー性皮膚炎の病勢がある時にはTARC(ターク)という物質が皮膚や血中に現れるのですが,治ったばかりの皮膚は見た目がきれいでもTARCがまだ残存し湿疹のかけらが残っているそうです。この時点でステロイド外用を中断すると湿疹が再燃してきます。逆にプロアクティブ療法に従い一定期間ステロイド外用を続けると残存したTARCも消えて本当の意味で治すことができます。

他の話で例えると,キャンプの時たき火をしっかり消火していないとその残り火が再燃し,ひどい時には山火事になることでしょうか。

ここでもうすこし具体的なスケジュールを書いておきます。

1)            寛快導入期(約2か月):ステロイド外用剤を丹念に塗布して湿疹を治す。

2)            維持期(14週間):湿疹が軽快してもステロイド外用剤を連日塗布。

3)            漸減期:保湿剤等を併用しつつ,湿疹がなくても週に12回はステロイド外用剤を塗布することはOK

 1の寛快導入は一般的な治療期間のことです。2の維持期が今回の最も注目すべき部分で,いったん湿疹が治ってももうしばらく同じ外用を続けることが大事だということです。さらに3の漸減期も画期的なことと考えられ,調子が良くても週に12回はステロイド外用剤を塗布して予防に努めてもいいということです。

 まとめますと,アトピーの人でいったん治ってもすぐ再発しやすい人は湿疹が治ってもしばらく外用を続けることが大事で,もっともっと治っても再発予防のために週に12回ステロイド外用してもいいということです。