2019年11月1日金曜日

皮膚疾患マメ講座 第24回 リンゴ病(伝染性紅斑)


このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。



 今回はほっぺたがリンゴのように赤くなるリンゴ病の話です。

<原因ウイルス>パルボウイルスB19が原因ウイルスで,潜伏期間は約2週間です。

<皮疹>特徴的な皮疹として,ほっぺたに平手打ち様紅斑が生じ,その後,腕,太ももに網目状紅斑を生じ約1週間で消えます。

<全身症状>皮疹が出る前に微熱,軽い頭痛や倦怠感で始まることがありますが,ないことが多いです。この全身症状が強い場合は小児科で診てもらった方がいいでしょう

 また関節痛や筋肉痛を伴うこともあります。


<治療>ウイルスを退治する薬はないので基本的に無治療で自然に治るのを待ちます。ただし若干脱水気味になるので水分を取ることはおすすめです。患者様が元気であれば普通に生活して大丈夫です。

<登園登校,他人への感染>皮疹が生じている時にはウイルスの感染力はすでに弱っているので他の子供さんにうつる心配はありません。ただし既にうつし終わっている可能性はあります。そんなわけで他人への感染は考慮しなくていいので,体が元気であれば学校を休む必要はありません。逆に体調が悪い場合は患者本人のために休んだ方がいいです。

体育の授業も体調に応じて必要なら休んでください。
なんだこの変な絵は?詳しくはコーヒーブレイク第24回をチェック。



<皮疹の再燃>約1014日後に日光照射や入浴,興奮で再燃することがあります。ですがこの再燃の原因は免疫の再活性によるもので,ウイルスは直接には関係ないのでご安心ください。再感染したわけではありません。この皮疹の再燃で来院される方も多いです。

<その他>①妊婦さんの場合は胎児水腫や流産を起こすことがあります。学校でリンゴ病が流行しているなら子供さんはできるだけ妊婦さんに近づかないでください。

②溶血性貧血の患者さんの場合は急に悪くなることがあります。注意してください。

③成人例では皮疹が典型的でなかったり,皮疹がなくて関節痛,筋肉痛だけの時もあります。

コーヒーブレイク 第24回 1日だけ画家


このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。

この前カルチャーセンターの画家教室に行ってきました。といっても1日だけの特別講座です。

講師は鶴田一郎さん。独特の美人画を書くことで有名な方です。もう30年前になるでしょうか,ノエビアのコマーシャルでした。歌手の南よしたかさんの『スローなブギにしてくれ』の「ウォンチュー,おーれの肩を,抱きしめてくれー」という軽妙なフレーズに合わせて登場する都会的で理知的な女性画にものすごくあこがれたものです。

私は知らなかったのですが,他にも郷ひろみさんや山口百恵さんのレコードジャケットのイラストも手掛けていたようです。



まさかその鶴田さんにお会いできるとは!そしてその鶴田さんに自分の絵を指導してもらえるとは!こんなに感激することが,こんなにいとも簡単に現実化するなんて!他の参加者さんはこの幸運を分かっているのでしょうか。いや,絶対分かっていません。例え分かっていても私が一番興奮していたような気がします。


鶴田さんの描く美人の有名な特徴は何といっても切れ長の目でしょう。一度見たら忘れられない,鶴田さんにしか描けないオリジナルなものです。ご自身もおっしゃっておられましたが「現実にはいそうでいない美人」です。特定のモデルはいないそうです。他にも丁寧に描かれた髪の生え際,丸い耳飾り,ムラのない色彩,細くしなやかな指などが特徴です。

鶴田さん曰く「僕のまねをするのではなく,皆さんそでぞれの美人画を書いてください。」「枚数を多く書けば上手になります。だから絵を書くことが好きなことはとても大切なんです。」けだし名言。聞いてて素敵な言葉です。



さて私の絵の腕前はというと・・。学生時代は美術の評価がいつも5段階で1だったのでいわずもがなの結果でした。一所懸命やって首から下はまずまずうまく書けたのですが,肝心の顔つきがたらこ唇の魚のようになってしまいました。まるでエジプトのピラミッドにある壁画のようです。これには鶴田先生も苦笑するばかり。「他人の絵には筆を加えない」主義の鶴田先生でしたが,さすがに下手と思われたのか少し修正してくれました。

ま,なんせ1日だけの画家ですから。

2019年8月6日火曜日

皮膚疾患マメ講座 第23回 手足口病


このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。



 今年は手足口病が流行しています。国立感染研究所によると令和元年7月8~14日の1週間で全国3000の小児科で手足口病の報告数が約4万人,1医療機関あたり12.64人でこれまでの最多数を記録したようです。


 皮疹は手掌,足底,口腔内に楕円形の小水疱が生じるのが通常型なのですが,別のタイプに四肢,臀部などにも拡大して生じる重症型もあります。現在流行しているのは重症型だろうと言われています。 


<原因ウイルス>エンテロウイルスとコックスウイルスで,それぞれいくつかのタイプがあります。だから複数回発症する可能性があります。潜伏期間は35日です。


<感染の仕方,感染予防>ウイルスを含んだ唾液やくしゃみ,咳,そして排便,またそれらを触った手からうつります。感染予防にはまず手洗い。おむつ交換後,排便後,あるいはそうでなくてもこまめに石鹸を使って手洗いしてください。できればタオルは共有しないほうがいいです。

マスクも有用なのでおすすめです。ただ子供さんはいやがることもあります。できるだけマスクをしましょう。水疱内にも一応ウイルスがいるようなので患者さんは握手やタッチも控えましょう。


<全身症状と治療法>発熱することがあります。発熱でなくても脱水症状をおこすことがあります。水分をよく補給してください。口腔内にびらん,潰瘍ができると痛くて食事が摂れないことがあります。食事はゼリーなど軟らかいものにして,それでも食べれないなら水分補給だけでも仕方ないと思います。

 基本的にウイルスを退治する薬はありません。症状に対して対処療法をするしかないのです。

教科書的には数日で回復するとされていますが,ピンからキリまであるようです。

 また注意が必要なのは脳炎や髄膜炎になることです。38.5℃以上の発熱の他に吐き気や頭痛があれば皮膚科をとばして小児科に行ってください。


<出席停止期間>はっきりした出席停止期間が定められているわけではありません。基本は「症状が改善して安定するまで」となります。

①発熱がある時は登園してはいけません。解熱して1日くらいしてからがいいでしょう。②元気がなかったり,咽頭痛,下痢がある時,それから口腔内のびらん,潰瘍があって普段の食事が食べれない場合も登園しないでください。

 約1ヶ月は糞便にウイルスがみとめられるため,登園後もその間は排便後やおむつ交換時に保育士や患児の手洗いが必要です。

<その他>手足口病感染後約1ヶ月後に2枚爪になることがよくあります。

コーヒーブレイク 第23回 研究会の幹事を務める

 令和元年721日大阪で第107回関西真菌懇談会が開催され,私が幹事を務めました。

今までも座長は何度もしたことがあるのですが,会頭にあたる役割を経験した事は初めてだったので結構緊張しました。一般演題5題と特別講演1題全てに司会をしなくてはならなかったからです。


 この会は真菌,すなわちカビの感染症を扱っている研究会です。第107回という数字からもわかるように伝統のある会なのです。一般演題もとても珍しくて興味津々の症例報告ばかりでした。関西ろうさい病院の福山先生がハリネズミから感染した白癬の症例,堺市の東先生がチワワから感染した白癬の症例を発表され,天理よろづ病院の田邉先生がなんと日本で40年ぶりに発見された黄癬の症例を報告されました。


 特別講演は赤木の恩師でもある島根大学皮膚科学教室の森田栄伸教授に,白癬菌が人間に侵入しようとしたときそれを防ぐ働きのある抗菌ペプチドについて話をされました。実はこの抗菌ペプチドは赤木が島根大学にいた時の研究課題だったものです。


 森田教授は赤木が助手(今では助教といいます)として島根大学で働いていた時期に助教授として広島大学から赴任されました。明るくてきさくな性格の方で一緒に食事に行ったり,テニスをしたり,結婚式では乾杯のあいさつもしていただき大変お世話になった方なのです。


 2次会では前述の福山先生や田邉先生とともに森田先生のリクエストで鉄板焼きの店に行きました。鉄板焼きの料理を食べながらワインのグラスを傾けるのは,まるでドラマ「ドクターX」の一場面のようでリッチなひと時でした。


私としてはこの会を成功させようと長い時間をかけて計画し,それが達成できたことに大きな喜びを感じています。私にとって近年の中で最も有意義で晴れやかな一日でした。

2019年4月24日水曜日

皮膚疾患マメ講座 第22回 APK 入浴後の手のふやけ


このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。



 今回は病気とまでは言えないかもしれませんが,特徴ある疾患をお話します。

長時間入浴すると手がシワシワになってふやけることがあると思います。これぐらいなら正常範囲だと思われます。

ですが,もう少し症状が強くなり,手のひらが白色にふやけて,一皮(ひとかわ)剥けた状態になるのであれば少し異常かもしれません。手のひらだけでなく足の裏も同じ症状になることがあります。ですが入浴後手足が乾燥するとこの症状は消失してしまいます。

こうした状態になる疾患をA P Kaquagenic palmoplantar keratoderma:日本語に訳すと「水につけると掌蹠がふやける」)といいます。


思ったよりありふれた疾患で当院にも多くのAPKの患者様がいらっしゃるのですが,残念なことに正式な日本語名称はなく,外国語で表現される皮膚病の一つなのです。

 かなり独特で特徴的な症状ですが,病院に行くほどではないと考え,密かに悩んでおられる方もいらっしゃるかと思います。

 原因については不明なところが多いのですが,汗管の異常があるのと何らかの外的刺激によって角層のバリアが破壊されて水の経皮吸収が増加するためと考えられます。

 治療についてです。軽症であれば放置でいいです。しかし薬が必要なら,角化を溶かす上に保湿効果もある尿素クリームがこれまでで一番効果があるように赤木は思います。

コーヒーブレイク 第22回 五輪メダリストにコーチしてもらう


このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。

 
赤木は社会人になってから水泳をはじめました。全身運動が健康にいいかなと考え,一念発起しスイミングスクールに通いました。開業した今も夏季は週に1回ジムのプールで泳いでいます。

 ところで現在大河ドラマでオリンピックに関係した「いだてん」が放映されていますがみなさんはオリンピックのメダリストに会ったことがありますか?少し前のことですが赤木はアテネオリンピック女子200mバタフライで銅メダルを獲得した中西悠子さんに水泳のコーチをしてもらう機会を得ました。

 銅メダルを取った,と言っても金メダルくらいを取らないとなかなか人々の記憶には残らないものです。アテネオリンピックの頃と言えば私は学位を取るための研究に忙しかった時期だったこともあり,正直私も中西さんの名前は知りませんでした。


しかし当時を知る人に聞いてみると,中西さんはオリンピックの直前は世界記録保持者だったそうで金メダルの有力候補だったそうです。残念なことにオリンピックの時に「魚のように速く泳げる水着」が開発されてしまい,それを使用した他国の無名選手が次々と好記録をだしてメダルを取ってしまい,使用していなかった中西選手は銅メダルにしか届かなかったのだそうです。そう聞くと,そんな話もあったかなと記憶がよみがえります。

 当時競泳のエースだった中西さんは悔しい思いもしたということですが,前述の水泳教室では楽しく和やかに我々に教えてくれました。現在は枚方市のスイミングスクールに所属しているらしいので選手以外の一般の人に接する事にも慣れているそうです。とても明るい感じの方でした。


 短時間でしたが個人レッスンがあり,体を引っ張ってもらいながら教わり,レッスン後はサイン会と写真撮影もありました。盛りだくさんで楽しい一日になりました。

 さて,それでは肝心の泳ぎは上手になったかというと,どうでしょう。変わってないか。ですがこれは中西さんのせいではありません。これを書いてて少しずつ記憶がよみがえったのですが,色々注意を受けて後日反復練習するよう指導されていたのですが,すっかりさぼっていたのでした。ウーン,また頑張るか。

2019年1月22日火曜日

皮膚疾患マメ講座 第21回 冬のあせも


このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。



 皆さん,ランニングなど運動していい汗かいていますか。今回は汗に関連した話をします。汗には温熱発汗基礎発汗があります。温熱発汗とは運動や入浴などで体温が上がった時にかく汗のことです。


ランニングの場合少しずつ体温が上昇するので問題ないのですが,冬場の入浴の場合いきなり体温が56度上がります。すると人間の皮膚は大量の汗を出そうとするのですが冬だと角質が乾燥して固くなっているため,汗は皮膚外に出ず皮膚内にもれてしまいます。   

これがじんましんのようになって非常にかゆくなったり,あせものように赤いぽつぽつができたりします。冬のあせもは汗をかかなくてもできます。

冬場の入浴後全身が赤くなってかゆくなるのにはこうした汗のもれが関係していることがあります。特に子供は大人に比べてとても暑がりなのでその傾向は顕著です。できれば子供さんの入浴温度は低い方がいいでしょう。38℃が理想ですが無理はしすぎなくていいと思います。


これに対して基礎発汗というのは普段からじわじわかく,汗をかいているとは自分で感じない微妙な汗のことです。そしてこの基礎発汗を促進することが皮膚の乾燥を防ぎ,アトピー性皮膚炎を治すことができると杏林大学の名誉教授 塩原哲夫先生はおっしゃっておられます。

 基礎発汗を促進するにはどうしたらいいか。簡単な方法としては足浴が挙げられます。家の風呂場で洗面器に43℃のお湯を入れて,510分足浴をします。足はすぐ熱くなりますが体は徐々に熱くなって基礎発汗が増えるそうです。43℃というのは結構熱く口で言うほど簡単ではないため最初は無理せず短時間でもいいと思います。

 また神戸大学の先生の意見では岩盤浴もいいそうです。サウナはすごく暑いのでだめです。じんわりと汗をかくのがいいのです


 それでは足浴も岩盤浴も難しい時にはどうしたらいいでしょうか?前述の塩原先生の話によると,腕や下肢に保湿剤をあまり伸ばさないでべたべたに塗って,その後ラップで包むのがいいそうです。大量の保湿剤が発汗を促進させます。

乾燥のひどい,あるいはステロイド外用剤のききにくいアトピー性皮膚炎患者様はこの方法をためしてみてはいかがでしょうか。


コーヒーブレイク 第21回 マラソン大会にチャレンジ


このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。

 

マラソン大会といっても本当に42㎞走るわけではありません。私が参加するのは10㎞の部です。数年前から健康のためにランニングをはじめ,目標をつくるためにマラソン大会に参加するようになりました。

飾磨東部の開業医さんで私と同様に10㎞ランを趣味とした先生方と一緒に毎年宍粟市さつきマラソン大会に参加しています。

元々走るのは苦手だったので,タイムは気にせず完走することを目的としていました。大会参加を始めた当初は,途中から歩いていたので完走してもタイムは1時間40分くらいかかっていたのですが,練習を積み重ねていくと徐々にペースがアップして最近では1時間を切るようになりました。速い人から見ると平凡な記録でしょうが,ライバルはあくまで自分自身。記録が塗り替えられるのは非常に誇らしく思えます。

このように書いていくと,マラソンというのは自分との戦いだから「根性で走れ!」といった根性論を想像されるかもしれませんがそうではありません。もちろん日々の練習(私は週に12回ジムに通っています。)も大事ですが,ちょっとした工夫が大きく役立ちましたのでご紹介します。



     ストップウォッチを見ながら走る。

ストップウォッチ付き時計がないと今どれぐらいの距離をどれくらいのペースで走っているか分からないので困惑して気力が持続しませんでした。ストップウォッチがあると「今は無理しないペースで走って,後半取り戻そう。」とか「いいペースだから苦しいけどあきらめずに頑張って走ろう。」と精神的に踏ん張ることができます。

     ウォークマンを聞きながら走る。

音楽は偉大です。テンポのいい曲を聴きながら走るとそれだけで無理なく速く走れます。

     飴玉をなめながら走る。

これは礒川先生に教えて頂いたのですが,飴玉をなめていると,のどが渇くのが抑えられるのと同時に血糖が上がりエネルギーとなります。これによって楽に走れます。

     ウインドスプリントをする。

実際に走る前に準備運動として短距離ダッシュを数回します。これをすることによって競技前に心臓が目を覚ますので,本番で心拍数が上がる時に苦しまないのです。



色々書いてきましたが,これからもあまり欲張らず,健康増進のためマイペースで走り続けたいと考えています。