2018年10月26日金曜日

皮膚疾患マメ講座 第20回 爪白癬(2) 外用療法


このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。



 前回は爪白癬の内服療法について書きましたが,今回は爪白癬に対する外用療法の話です。以前は,爪白癬に対する外用剤は厚くて硬い病爪の中まで薬剤が浸透せず治療効果がほとんどありませんでした。しかし最新式の塗り薬には爪の中まで浸透する成分が入っているため,今までなら内服薬でないと治療困難であった爪の中にいる水虫菌を退治することができるようになりました。これは画期的なことです。


また爪白癬を治療する内服薬は肝臓や腎臓が悪い人には使えないのですが,外用剤なら内臓に影響がないので安心して使えます。

 外用薬が効いてくると根元からいい爪が生えてきます。根治するのに若い人で6か月,年をとると1年近くかかります。


 爪を溶かす成分が入っているので薬液が皮膚に付着すると皮膚がただれることがあります。皮膚に薬液がついたらティッシュペーパーや綿棒でふき取ってください。

ただ爪がぶ厚すぎる場合効果が少ない気がします。また多くの爪が爪白癬になっている場合全部に塗るのもなかなか面倒なので,重症の爪白癬の場合は内服がいいのではないかと考えています。ということは逆に言えば爪白癬の爪の本数が少ない時は外用がいいとうことですね。

 あと薬の値段が少々高めです。

コーヒーブレイク 第20回 西郷どんの舞台,鹿児島に行く


このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。

 

皆様,大河ドラマ「西郷どん」が佳境に入ってまいりましたがご覧になっていますか。およそ2年に1回の割合で大河ドラマに関連した話を提供している赤木ですが,今回は鹿児島県の魅力の一部を同ドラマにからめて伝えようと考えました。1枚目の写真は鹿児島市中心部にある西郷隆盛像です。

それでは「西郷どん」のオープニングに出てくる風景を紹介します。まずは鹿児島のシンボル桜島。今も生きている雄大な活火山で男前という表現が用いられます。続いて高山の峰で西郷さんと大久保さんがすれ違うシーンがありますが,ここは宮崎県との県境近くの高千穂峰です。また山の頂上近くのはずなのになぜかみとめる大きな湖。これこそは大浪池です。

ちなみに途中子供が戦国武士の格好をして走る祭りのシーンがありますがこれは妙円寺詣りといって,関ケ原の戦いで薩摩の猛将島津義弘が徳川家康軍を相手に敵中突破を敢行して関ケ原から鹿児島まで脱出したことに由来する行事です。

そして最大の見どころは近年知名度が急上昇した雄川(おがわ)の滝です(写真)。落差46mの滝の水が流れ落ちる滝つぼにはエメラルドグリーンの水面が広がり,人々を神秘的な気持ちにさせてくれます。

ちょっと不気味ですが西郷隆盛終焉の地である西郷洞窟(写真)。最後の5日間を過ごしたそうなのでドラマの終盤で登場するはずです。一応チェック。

話はがらっと変わって食べ物の紹介です。黒豚のとんかつ,豚しゃぶ,さつま揚げ,魚のきびなごなど色々あるのですが,赤木の一番のおすすめは「しろくま」。暑い季節に行ったせいもあるのですがフルーツたっぷりのミルク味かき氷はたまらなく美味しかったです。

他にも色々ありすぎて書けないのですが,最後に紹介するのは釜蓋(かまふた)神社。釜ふたを頭にのせて鳥居から賽銭箱まで落とさずに歩いて参拝すれば願いが叶うというやり方(写真)がとてもユニークです。ぜひとも皆さん体験してみてください。


2018年8月2日木曜日

皮膚疾患マメ講座 第19回 爪白癬 (1)内服療法

このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。



 皆さんはきれいな爪をしていますか。

以前は,爪白癬の内服薬は副作用が強く効果が少ない,という時代がありました。現在は新しい薬が開発され,逆に効果が高く副作用がかなり減りました。

外用剤は爪が硬くて浸透しにくいことが多いため効果が不十分と思われます。また飲み薬の方が薬を忘れることが少ないのではないかと想像します。当院では内服治療を一番に考えています。

 爪が生え変わるのが足の爪の場合若い人で6か月,年をとると1年近くかかるので,内服期間は若い人で6か月,老人は1年近くと説明しています。結構きれいに治ると赤木は信じています。

 副作用として肝機能障害が有名です。以前に比べかなり割合は減りました。当院では治療経過中に肝機能障害が現れていないかしばしば採血検査をして確認します。もし異常が現れたらそこで内服を中止すれば肝機能も元に戻ります。他に胃痛が現れる人がいるので胃薬も併用して使います。

 内服療法している人に外用薬の併用は不必要と考えます。飲み薬だけで大丈夫です。足白癬を合併している方は足白癬までよくなります。

 さああなたもきれいな爪になりませんか?次号では爪白癬に対する最近の外用治療について解説します。

コーヒーブレイク 第19回 W杯ポーランド戦に思う-格好悪くても生きる方がいい

このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。

 

普段より興奮して書いていることをお許しください。

歴史に残るものすごい試合だった。W杯予選H第3試合ポーランド戦を見た私の率直な感想です。


サッカーW杯は4年に1度行われるオリンピックにも匹敵する世界イベントです。ご存知だと思いますが予選第1試合は強敵コロンビアと戦い2-1で日本勝利,第2試合は難敵セネガルと戦い2-2で引き分け。前評判の悪かった日本にとっては予想外の好結果といえたでしょう。第3試合は引き分け以上では文句なく,負けても他試合の内容によっては予選突破が決まるという状態でした。


しかし相手のポーランドも世界ランク9位の強敵。選手の身長は日本に比べ圧倒的に高く不利な試合でした。前半は0-0でしのいだものの,後半14分セットプレーからとうとう1点を入れられてしまいます。このまま負けてしまうと日本は予選敗退となり,第1戦,第2戦の熱闘が無駄になってしまいます。日本は反撃に出ようとしますが,逆に身長の高いポーランドのカウンター攻撃を受け却って不利な状態になり2点目も失いかけます。しかし攻め続けるしかない日本。そのはずが後半37分,FW武藤選手に代わる交代選手は思いがけない選手でした。


長谷部選手。彼は攻撃の選手ではなく守備の選手のはずです。さらなる攻撃が必要な時に何故?その理由は徐々に判明します。

同時刻に行われたセネガル対コロンビアの試合において,後半29分コロンビアが1点を入れセネガルに1-0で勝っている状態になったのです。このままだとイエローカードの少ない日本の方がポーランドに負けてもぎりぎり決勝トーナメントに進めるのです。


残り10分,日本の露骨なボール回しが始まります。ボール回しとは自分のゴールエリア近くで味方同士安全なパス交換を行い,点を取りに行こうとせず時間をつぶす作戦です。基本的には勝っているチームが時間稼ぎのためにすることで,負けているチームが行うことは自らの負けを決定づける作戦のため意味がない戦術のはずです。ボール回しは見ている観客にはつまらない上に,負けている日本が行っているので激しいブーイングが起きました。また他力本願(この場合コロンビアとセネガル)の作戦に,「セネガルが同点ゴールを決めたら最悪だ。」と味方ベンチからも動揺があったようです。

幸いコロンビアがセネガルにそのまま1-0で勝ったため日本が決勝トーナメントに進めたから良かったものの,負けているチームが無気力な試合をしたため各国から非難の声があがりました


しかし赤木はこれを是と訴えます。だって日本サッカーはW杯で惜しいところで敗れるという結果を数多く経験してきているからです。たった2ヶ月しか準備期間のなかった西野監督はマスコミからボロクソにたたかれ,3戦全敗必至といわれました。予想外に前2戦で好結果を出しましたがそれでも決勝トーナメントに勝ち進めなければ意味がありません。また前回のブラジルW杯で惨敗を経験し今回雪辱を誓う主力の選手も高齢でおそらく4年後はありません。惜しかったけど負けました,ではすまされないのです。


それでなくても日本以外のアジア4か国,さらにアフリカ5か国は全て予選グループで敗退しています。前回優勝のドイツすら最下位で敗退です。サッカー大国であるはずのイタリアは出場すらできなかったのです。W杯で勝つということはそれだけ厳しいことなのです。このような過酷な状況の中,見栄えの悪い戦い方をした日本を責めるのはそういう事情を知らないからだと思います。


賛否両論あるのは当然です。しかし赤木の価値観から言うと「格好よく散るか?格好悪く生きるか?」ということになります。私は美しくなくても生きる方を選択します。

興奮して一気に書き上げたのですが,このあとのベルギー戦の死闘で日本の評判が回復したので本当に良かったと思う赤木でした。


2018年4月27日金曜日

皮膚疾患マメ講座 第18回 プロトピック®軟膏


このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。


 プロトピック®軟膏はアトピー性皮膚炎の治療薬の一つです。ステロイド外用剤ではなく免疫抑制外用剤です。治療だけでなく予防も兼ね備えて使えるので,「ステロイド外用剤だと治るけれど,保湿剤だけでは予防できないから困る。」という人におすすめです。

 基本は顔面につける薬ですが,効果の高い人には体に使用することも可能です。


長所:①ステロイド外用剤と異なり長期使用しても皮膚は薄くならない。

②病変部の皮膚には入り込むが,正常部の皮膚には入り込まないので治療だけでなく予防にも使える。

 こう書くと非常にいい薬に思えますが,刺激を感じやすいという弱点もあります。

短所:①使い初めに使用部がほてったり,ピリピリ感など刺激症状がある。

②ヘルペスやニキビなど皮膚感染症をおこすことがある。

説明書によるとプロトピック®軟膏を1週間塗り続けていると刺激感は感じられなくなる,となっています。それでも刺激感が強くてプロトピック®軟膏は使えないという方が大勢いらっしゃいます。


 そこでできるだけピリピリ感など刺激を感じないよう以下の方法を提案します。

方法:①風呂上り直後は体がほてった状態なので,しばらく時間をおいてこのほてりがとれてから塗る。

②いきなり広範囲に塗ると刺激を感じやすいので,最初は狭い範囲にチョンチョンとつけるだけにする。決して薬を伸ばさない。刺激に慣れたら徐々に塗る範囲を拡げる。

③保湿剤を先に塗ったり,混ぜたりすると刺激を感じにくくなる。当院では保湿剤と1:1,あるいは1:2でうすめて開始しています。

④塗ったところ,特にすこし刺激がある時に保冷剤などで冷やす。

⑤塗った直後は日光を避ける。

 理屈では非常に良い薬なのですが,ピリピリほてる刺激感のため使えない方が結構いらっしゃるのが現実です。この薬をなんとか使いこなせないかと日々考えているところです。

コーヒーブレイク 第18回 星野仙一氏との思い出


このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。
今年201814日星野仙一氏が死去されました。選手時代は闘争心あふれるプレイスタイルで活躍し,阪神の監督に就任されてからは厳しさの中にも愛情あふれる姿が印象的で,引退されてからも隠そうとしても隠し切れない野球に対する熱い情熱を感じさせる素晴らしい野球人でした。数多くの人がそんな星野氏に魅せられていました。

かくいう私もその一人で,2003年の阪神優勝のパレード時は星野氏を一目見ようと当時住んでいた島根県から駆けつけたくらいです。最近も東京と大阪で2度のお別れの会が開かれ多数の方々が献花に訪れたことをニュースで聞いた人もいると思います。

実は赤木には星野仙一氏と個人的なエピソードがあります。2年前の皮膚科学会に特別講演の講師として星野仙一氏が招かれ,学会後のパーティにも参加され乾杯の音頭もとられました。先述したように星野さんの大ファンであった赤木は早速近づいてサインを書いてもらうようお願いしました。

 ところが「こんなパーティでサインを頼むとは何事だ。」とすごく怒られてしまいました。燃える男と呼ばれ,中日の監督時代には試合の乱闘で本来なら選手を引き留める役目でありながら「かかってこんかい。」と率先して乱闘に加わっていたあの星野さんですから,目の前にしたその迫力や怖さといったら言葉では表現できません。それでも「書いてやるから早く渡さんかい。」と言われ,おそるおそる色紙とサインペンを手渡そうとしたところ「(サインペンの)キャップを外さんかい。」とまた怒鳴られ,私は自分の体が固くなるのを感じました。

 写真のようになんとかサイン色紙を頂きましたが,憧れの人にさんざん怒られて私がしばらく落ち込んだことは皆さんが想像される通りです。あらためてサイン色紙を見てみると,字体は崩れていますが「星野仙一」と書いてあって,左上に一部だけ読めない部分がありました。「なんて書いてあるんだろう?」長らくその答えはわからなかったのですが星野さんの死後,ある記事を読んで謎が解けました。

 「夢」 それは星野さんが好んで使われた言葉だそうです。疲れてもいたでしょう,怒ってもいたでしょう。そんな時にでも自分の名前以外に一言加えて頂けたなんて。星野さんのことを,厳しい中にものすごい優しさがある,と多くの方がその人柄を評しています。私はそんな星野さんの一面に直に接することができた感動でしばらく身が震え涙が出そうになるほどでした。

星野仙一氏のご冥福を心より祈ります。合掌。


2018年1月30日火曜日

第17回 アタマジラミ


このコーナーは皮膚病診療について独自の視点で解説します。


アタマジラミは髪の毛の接触によってうつります。集団生活の学校や幼稚園,あるいはプールなどで感染し,その後家族内感染します。決して不潔が原因ではありません。時に集団発生することがあります。

 治療はドラッグストアでフェノトリン(商品名:スミスリンLシャンプー)を購入してもらい2日おきに4回シャンプーします。卵には効かないので毎日ではなく,2日おきにシャンプーすることが肝要です。保護者の方が洗ってあげてください。
 発見された子供さんだけでなく兄弟姉妹さんに拡大している可能性があるので,できれば一緒にシャンプーした方がいいかもしれません。
 また髪の毛についている卵を見つければ目の細かいクシや親御さんの指で取り除くようにしてください。そうすることで見かけもきれいになってきます。

 注意事項も列挙します。

<洗濯>洗濯機で洗えるものは,洗濯前に60度以上のお湯に5分以上つけてから洗うといいでしょう。虫,卵ともタンパク変性をおこし死滅します。乾燥機やアイロンの使用も効果的です。

 カーペットや人形など洗えないものはポリ袋に入れて封をし2週間放置します。シラミは吸血できないと23日で餓死するので卵の孵化する期間も考慮し2週間で駆除できます。

<掃除>髪の毛から落ちたシラミは23日で餓死するので神経質にならなくていいのですが感染拡大防止のため掃除機でこまめに掃除しましょう。床に寝転がることはやめましょう。

<寝具>布団など寝具は日光に当てて紫外線で退治しましょう。

<通学>アタマジラミに感染しても通園・通学の規制はありません。しかし髪の毛と髪の毛の接触で他人にうつる可能性があります。園や学校と相談してバンダナや帽子などで髪の毛をくるんで隠すようにしておくことがエチケットです。

<持ち物>タオルや帽子,ブラシなど直接体に触れるものは他人と共用しない。

<プール,風呂>水の中ではシラミは毛から落ちないようにしがみついてうつらないので安心してください。ただし脱衣かごやロッカーに入れたタオルやくしなどの共用,接触でうつる可能性がありますからこの時点での注意が必要です。

<就寝時>園のお昼寝や家族で並んで寝る時に毛の接触で感染します。子供に添い寝する時大人にもうつることがあります。少し離れて寝るなど多少の工夫で防げます。

第17回 ルーク・スカイウォーカーは死なず


このコーナーは赤木院長の個人的な趣味を綴ったものです。下手な文章にはご容赦。



今回は映画の話です。

皆さん現在「スターウォーズ」の最新作「最後のジェダイ」が公開されていることをご存知ですか?赤木は熱狂的なファンというわけではないのですが2年に1回くらいのサイクルで公開されるので毎回映画館で見ています。もちろん面白いのですが詳しく内容を話してみろといわれると理解していないところも多いです。今回は8作目つまりスターウォーズ8なのですが,これまでの全映画の中で最も観客数が多かったのが前作のスターウォーズ7と聞くと驚いてしまいます。


ところでこのスターウォーズシリーズの最初の3部作の主人公がルーク・スカイウォーカーだったことを覚えておられますか?私と同世代の方は知っているかもしれませんが最近の人はどうでしょうか?あまり目立たない存在だった気がします。スターウォーズといえば真っ先に思い浮かぶのはダースベーダーです。その他ヨーダとかR2-D2C3POのような非人間的なキャラクターが思い浮かび,人間キャラクターはハリソン・フォード演じるハン・ソロが格好良かったことを覚えています。


 でも今回の映画ではルークが最高に良かったです。何が良かったかというと,とても弱くて情けない一面をさらけ出している部分が人間味あふれてて,さらにそれを乗り越えて再びヒーローとして悪と戦う場面がとても格好良かったです。


 最初の3部作の中で宇宙で一番くらいのヒーローになったはずのルークが,父親アナキン・スカイウォーカーや師匠オビ=ワン・ケノービがおかした大きな過ちをまたまたやってしまうのです。「やってもうた。」関西弁風に言うとそんな感じになってしまったルークは,ヒーローらしからぬ情けない行動に出ます。そう逃亡するのです。宇宙で一番見つかりにくい惑星に逃げ延びて誰にも知られないようにひっそり隠れ暮らすのです。そして師匠のヨーダに「バカモノ。」と怒られ,杖で頭をポカポカ叩かれるのです。

こんなみじめな姿をさらすルーク・スカイウォーカーですが,物語の後半にはとてつもない活躍を見せます。どれくらいすごいかというと今まで見た映画の中のキャラクターの中で最強です。スーパーマンもターミネーターも真っ青。

 これから映画を見る方におすすめするのですが,ルーク・スカイウォーカーの「素晴らしい。お前の答えは全て間違っている。」という皮肉たっぷりなセリフと(ルークって皮肉屋だったんですね。これもびっくり)肩のほこりをポンポンと払う仕草を是非ともチェックしてください。